2021.05.19
SDGs・ESG を踏まえた M&A のあり方
のぞみ総合法律事務所
弁護士川西風人
1 はじめに
近年、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)やESGに関する課題への対応は、各社の経営においてその重要性を急速に増しています。
2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則(PRI)に署名したことを契機として、日本においても活発に行われるようになり始めたESG投資ですが、2020年に改訂された日本版スチュワードシップ・コードにおいて、スチュワードシップ責任の内容として機関投資家がサステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮を行うことが明記されたこともあり、今後もその拡大傾向は続くことが見込まれます。そのため、特に、機関投資家を含む多数の投資家から投資を受けている上場企業にとっては[1]、ESG要素に配慮した経営を行い、また、ESGに関する課題の解決と大きく重なりあうSDGsの開発目標実現に向けた取組みを行うことは、投資を呼び込むために重要といえます。逆に、サステナビリティへの配慮を欠いた経営を行っている企業については、投資対象からの除外や既存投資の引上げ等の可能性があるといえます[2]。
また、グローバル企業においては、サステナビリティへの配慮から、サプライヤーとの取引条件において人権尊重や環境保護への取組みを重視している企業もあり、サプライヤーとしては、そのような取組みを進めることで付加価値を高めることができる一方、対応が遅れればサプライチェーンから外される懸念もあります。加えて、人権侵害や環境破壊等を原因として、レピュテーションが大きく毀損し、不買運動や入札参加禁止等により企業活動に深刻なダメージを受けてしまう事例も多々みられるところです。このように多数のステークホルダーとの関係を有する企業活動において、SDGsやESGに関する取組みは、上場企業に限らず、全ての企業にとって重要な課題といえます[3]。
このように、SDGsやESGへの対応が、単なる慈善活動としてではなく、事業そのものとして取組むべき経営の重要課題となることに伴い、企業を買収するM&Aの局面においても、これらの点に関する考慮の必要性が増しているといえます。
本稿では、このようなSDGsやESGを踏まえたM&Aの今後の実務のあり方について、考察してみたいと思います。以下では、SDGsやESG要素が重要性を有する近時のM&Aの事例について紹介した上で(後記2)、これらの事例も含めた一般的なM&AにおいてSDGsやESGに関する考慮が影響すると思われる点について、デュー・ディリジェンス(後記3)、買収契約書(後記4)及びPMI(後記5)の各段階に応じて検討します。
2 近時の注目M&A事例(SDGs・ESGの観点から)
(1)ソリューション提供型
ア 気候変動リスクの解決に向けて
SDGsやESG要素を重視して近年増加傾向にあるM&Aの事例として、既存の化石燃料事業からの脱却や低炭素化社会への移行等、気候変動リスクの解決に向けた取組みとして行われるM&Aが挙げられます。
例えば、英国の石油大手であるbp p.l.c(以下「bp社」といいます。)は、2020年12月、カーボンオフセット[4]開発を手掛ける米国のFinite Carbon Corporationの株式の過半数を取得しました。bp社は2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、化石燃料事業への依存を脱却する方針を打ち出しており、当該買収もその方針の一環として行われたものといえます。
また、三菱商事株式会社と中部電力株式会社(以下、合わせて「両社」といいます。)は、2020年3月、共同で設立した会社を通じて欧州で総合エネルギー事業を展開するEneco社を買収しました。Eneco社は、再生可能エネルギー開発を積極的に進めるとともに、小売事業においてデジタル技術を活用した顧客重視のサービスを展開している先進的な総合エネルギー事業会社であり、両社は、それぞれの知見を活用しながら、低炭素化社会への移行や地球環境保全といった社会課題の解決に貢献することを目指すと発表しています[5]。
イ 事業承継の後押し
優れた技術力やサービスを有するものの、後継者不足や新型コロナウィルスの影響により事業継続が困難となっている地方の中小企業について、地方銀行がその事業承継を支援する取組みも行われています。例えば、株式会社千葉銀行と株式会社横浜銀行は、上記のような事情で事業継続が困難となった会社の株式を買い取るためのファンドを組成し、経営状況を改善した上で、そのネットワークを活かして適切な承継先へ売却するという形で事業承継を後押しするという取組みを発表しています[6]。
このような取組みは、対象となる企業の事業内容そのものがサステナビリティという要素を推進するものではなくても、優れた技術を維持し、地域社会における雇用促進にもつながることで、地方創生を活性化し、SDGsの開発目標として掲げられた「1 貧困」、「8 仕事と経済」、「9 産業と技術」及び「10 不平等」等に含まれる課題解決に貢献するものといえます。
(2)ESGリスクによる想定外のダメージ
前記(1)のように、SDGsやESGという要素が、M&Aを推進する積極的な要素となる事例がある一方、M&AにおいてESGリスクが顕在化したという事例も見られます。この点、2020年6月に、1兆円を超える和解金の支払いを行うことが報じられた独国のバイエルAGによる米国のモンサント・カンパニーの買収案件は示唆に富んでいます。
モンサント・カンパニーは、グローバルなバイオ化学メーカーで農薬や遺伝子組み換え種子を販売して事業成長していましたが、これらの製品が人や環境へ与える影響を懸念するNGO等から強く批判を受けている会社でした。バイエルAGは、モンサント・カンパニーの買収を2018年6月に完了しましたが、同年8月、カリフォルニア州において、モンサント・カンパニーが販売する除草剤の発がん性に関する個別訴訟で高額の賠償命令が出されました。これが契機となり、同様の訴訟について原告数が爆発的に膨れあがり、最終的には原告が10万人を超える事態となりました。バイエルAGは、訴訟の長期化や企業イメージ等を考慮して、1兆円を超える和解金の支払いによりこれらの訴訟について和解することを発表しました。
買収からわずか2ヶ月後にカリフォルニア州における最初の判決が出ているため、買収の検討段階においても、バイエルAGはこのような訴訟の存在自体は認識していたものと思われます。ただ、ここまで深刻な事態に至るということは想定していなかったのではないでしょうか。本件のような個別訴訟が存在しているからといって直ちに買収を断念するということは現実的ではありませんが、SDGsやESGに関する意識がグローバルで高まっている今日において、これまで以上に慎重なリスク評価(対象会社のレピュテーション、訴訟の性質、推移、影響等)が必要であることを示す事案といえるでしょう。
3 デュー・ディリジェンス
(1)調査対象の拡大
前記2(1)のようにSDGsやESGという観点が特に重要性を有する買収案件にかかわらず、従前から、M&Aの際に一般的に実施される法務デュー・ディリジェンスにおいても、ESG要素に関しては、例えば土壌汚染、違法な時間外労働や未払い残業代、贈収賄等のように、法令違反等の有無を中心に調査対象とされてきました。
しかし、前記1で述べたような近年のSDGsやESGに関する意識の高まりを受け、デュー・ディリジェンスにおける調査も、法令違反等の有無に加えて、SDGsやESGに関する要素をより広く考慮した範囲で行うことが求められつつあります。例えば、いわゆるソフトローの遵守状況、SDGs・ESGに関する会社としての方針や取組み(ポリシ-・社内規則の有無、管理体制等)、ダイバーシティの観点から取締役会の構成(女性や外国人の比率)等についても調査対象とすることが考えられます[7]。
以下では、特に関心の高いトピックである環境分野とサプライチェーンについて、デュー・ディリジェンスにおける調査対象の拡大について考えてみたいと思います。
(2)環境問題に取り組んでいるか
気候変動への対応が全世界において緊喫の課題となっている今日においては、従来のように法令基準を超える土壌汚染や大気汚染の有無といった観点に加え、環境問題に対する取組み、戦略、リスク管理等についてもデュー・ディリジェンスの対象となり得ます。
例えば、対象会社におけるISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際認証規格)の取得状況や遵守状況について確認するということが考えられます。法令による規制遵守にとどまらず、自主的にISO14001認証を取得し、自社の企業活動から生じる負の環境影響の低減を図るための管理体制を構築・運用している会社は、環境に配慮した経営を行っているとの一定の期待ができることから、同社の企業活動に含まれる環境リスクが顕在化する可能性の判断材料の一つとして参考になります。
また、気候変動の大きな要因である温室効果ガスの排出量やその削減に関する取組み等について調査対象とすることも考えられます。
前記1で説明したように、温室効果ガスの排出量が大きく、かつ、その削減への取組みも行っていないといったサステナビリティへの配慮を欠いた企業については、顧客のサプライチェーンから除外される可能性も否定できないところです。そのため、対象会社の事業の継続性という観点から、これらの点について確認しておくことは有益といえます。また、現在、政府において排出量取引を含めたカーボンプライシングの導入について検討が進められているところであり[8]、今後の政策動向次第では、温室効果ガスの排出量はバリュエーションに直接影響する重要な要素といえます。なお、CGコード改定案(3-1③)は、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、TCFD[9]等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきとしています。この点、TCFDの提言する開示の枠組みでは、温室効果ガスの排出量は推奨される開示内容とされているため、特にプライム市場上場会社となる予定の会社については、この観点からも、対象会社がどの程度の温室効果ガスを排出しているかについて把握しておくことは望ましいといえます。
(3)サプライチェーンにも配慮しているか
昨今の人権尊重への意識の高まりとともに、企業には、自社従業員との関係で労働法規に違反しないというにとどまらず、サプライチェーンにおける人権侵害等についても配慮することが求められるようになってきています。製造委託先等において劣悪な労働環境で従業員が勤務させられていたことが判明したことを受け、委託企業についてもその人権侵害に加担しているとの非難がなされ、ブランドイメージを大きく毀損して不買運動や株価の下落を招く事例も散見されるところです。
このような人権分野におけるサプライチェーン管理という考えが浸透する契機となったのが、2011年に国連人権理事会において採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」といいます。)です。指導原則は、企業には人権を尊重する責任があることを前提に、その責任の一環として自社の事業及びサプライチェーンにおける人権への負の影響を評価し、対処する人権デュー・ディリジェンスの実施を求めています。人権デュー・ディリジェンスという場合の「デュー・ディリジェンス」は、M&Aの文脈で一般的に使われる用語と異なり、「企業の役職員がその立場に相当な注意を払うための意思決定や管理の仕組みやプログラム」という意味を有しており、リスクを特定し、対策の計画を立て、対策を実施し、是正するといったPDCAサイクルにおいて企業が継続的に実施するものをいいます。
上述のとおり、サプライチェーンにおける人権侵害が企業活動における大きなリスクとなることを踏まえると、M&Aに際して行われるデュー・ディリジェンスにおいても、対象会社による人権デュー・ディリジェンスの実施状況やその結果について確認することにより、対象会社のサプライチェーンにおける人権侵害リスクの有無や程度を把握しておくことは有意義と思われます。また、サプライチェーンの中でも対象会社のビジネスにとって重要性の高い仕入先については、対象会社に対して個別にこれらの会社における強制労働や児童労働等の人権侵害のおそれについてヒアリングすることや、これらの会社と締結している契約書におけるCSR条項の有無[10]を確認することも考えられます。
4 買収契約書
(1)表明保証の拡大
デュー・ディリジェンスの対象がSDGsやESGに関する要素をより広く考慮した範囲に拡大していくことが想定されるのと同様に、買収契約書における表明保証条項についても、これらの要素を考慮した事項までその対象とすることが考えられます。
例えば、サプライチェーンにおいて強制労働や児童労働がなされていないこと、事業に伴い排出する温暖化ガスの排出量が一定以下であること、又は環境NGO団体から警告等を受けていないこと等、当該事項について違反があったからといって必ずしも法令違反にはならないものの、SDGsやESGの観点から重要性の高い事項についても規定することが考えられます。また、セクシャルハラスメントを契機とする役員の辞任や会社の破産等[11]が増加したことを受け、これまで個別に規定されることの少なかった役員によるセクシャルハラスメント問題の不存在という具体的な表明保証条項を入れる例も出てきています。
もっとも、このように法令違反の有無にとどまらない事項等についてまで表明保証の対象に含めると、対象が広範になりすぎるとして、売主は、これらの表明保証条項の受入れを拒絶してくることが想定されます。その場合でも、「売主の知る限り」といった限定を加えたうえで表明保証の対象とすることや、仮に表明保証の対象に含めることができなかったとしても、少なくとも現在売主が把握している問題点等について説明させるきっかけにすることが考えられます。
(2)前提条件・誓約事項による対応は必要か
デュー・ディリジェンスを実施する過程において、対象会社に実際にSDGsやESG要素に関する問題が存在することを発見することがあります。
この点、法令違反に該当するような事項が発見された場合には、従前から、その是正を取引実行の前提条件とすることや、取引実行までの解決が必須とまではいえない場合には改善に向けた最善の努力を行うことを誓約事項とすることが多いと思われます。
もっとも、SDGsやESGに関する昨今の意識の高まりや、前記2(2)の事例でみたようなESGリスクが顕在化した場合の損害が甚大であることに鑑み、必ずしも法令違反とはいえないようなNGO団体からの指摘がなされている場合や、法令違反に該当するか明確ではないような紛争が存在している場合に、その事象の性質やレピュテーションリスクを考慮した上で、当該事象の解決を取引実行の前提条件にすること等は検討に値すると考えます。
5 PMI
買収が完了すると、買収後の統合作業(Post Merger Integration:PMI)として、買収者は、自社グループの規程やポリシー等を対象会社にも適用し、グループ全体のガバナンス体制を構築していくのが通常です。SDGsやESGに関する規程等についても対象会社へ導入し、周知徹底することで、グループ全体として同一水準の運営ができるようにすることが重要です[12]。
また、このような作業と並行して、買収前には実施しきれなかったリスク調査も速やかに実施することが肝要です。もちろん、買収前に全てのリスクを洗い出すことができれば良いですが、デュー・ディリジェンスには、様々な面で限界(時間・コスト・交渉力)があるため、実際には、そのように全てのリスクを把握した上で買収が行われることは多くありません。特にSDGsやESG要素に関する事項については、範囲も広範となるため、十分な調査を買収前に行えないことが考えられます。そのため、買収後、対象会社が自社のコントロールできる状態となった段階で速やかに、PMIの一環として、前記3で述べたようなSDGsやESG要素に関する事項も含めて、違法行為や自社グループの水準に照らして不十分・不適切な慣行がないかを入念に調査することが必要となります。
このように時間を置かずに調査を実施することは非常に重要といえます。もし、買収後の調査により、違法行為や違法ではなくても表明保証がなされた内容に違反するような不適切な慣行が判明した場合、買主は売主に対して表明保証違反を根拠に損害賠償請求をしていくことができます。しかし、買収後、数年経過した時点までそのような違法行為や不適切な慣行が継続していた場合には、買収契約上の期間制限により売主に対して損害賠償請求ができないことはもちろんのこと、むしろ自社の子会社においてそのような行為を放置していたということで、自社グループにおける内部統制の問題として、買主自身が法的又は社会的責任を負う立場となりかねません。特に、ある事業部門においてガバナンスに問題があり、不祥事(検査偽装・不適切会計・贈賄等)の発生した会社から救済的に他の優良な事業部門のみを切り出して事業承継をするような場合には、留意が必要です。このような事業承継に際しては、偶発債務等の不測の債務は承継しないとされている場合が多いですが、自社グループとなった後にも継続した不適切な慣行に関しては、上述のとおり自社が責任を負うことになります。他の事業部門においてガバナンス上の問題があった場合、発覚していないだけで、他の事業部門においても類似の不適切な慣行が存在する可能性は否定できないため、業務フローや具体的なオペレーション等、入念に確認することが望ましいです。
6 おわりに
以上みてきたように、SDGsやESGへの対応が経営の重要課題となることに伴い、これらの点に関する考慮が、企業を買収するM&Aの局面においても様々な事項に影響を及ぼすことが考えられます。もっとも、SDGsやESGを踏まえたM&Aの実務はまだ緒についたばかりであり、確立したプラクティスというものは存在していないため、今後のSDGsやESGの発展と共に、実務が形成されていくものと考えます。
本稿では私見にわたる部分が多くありますが、皆様がM&Aを実施する際に、本稿で検討したような点も含め、SDGsやESGという観点も加味して案件に取組む契機としていただければ望外の喜びです。
以上
2
株式会社インテグレックスの運営する「ホットプレス(第96回)」掲
[1] 2021年4月6日付けで金融庁より公表されたコーポレートガバナンス・コード(改訂案)(以下「CGコード改訂案」といいます。)においても、「中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まって」おり、「我が国企業においては、・・・サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である」との考え方が示されました(基本原則2:考え方)。
[2] 国内の大手保険会社グループでは、国内の新規石炭火力発電所に関する投融資は原則として行わないとすることに加え、保険の引受けも行わないとするところも出てきています。
[3] 例えば、米アップルは2030年までに自社の全製品について、生産と利用を通じて排出する二酸化炭素を実質ゼロに抑える方針を2020年7月に表明しています。同社は2021年3月31日、同社に納める製品の生産に使う電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表しました。同社製品の生産を担うサプライヤーには今後、再生可能エネルギーへの移行をより強く求めるとみられ、対応できない企業は米アップルと取引ができなくなる恐れもあります。
[4] 温暖化ガス削減の目標達成に限界がある企業が、森林開発に投資したり再生可能エネルギーを利用したりすることで、自社の排出量を間接的に相殺する手法。
[5] 「オランダ総合エネルギー事業会社Eneco社の買収」中部電力株式会社、プレスリリース、2020年3月25日(https://www.chuden.co.jp/publicity/press/3272656_21432.html)
[6] 「『千葉・横浜パートナーシップ 1 号ファンド』の設立について」株式会社横浜銀行、ニュースリリース、2021年3月31日
(https://www.boy.co.jp/boy/chihou/news/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/03/31/20210331.newsreleasescyp.pdf)
[7] 今仲翔「ESGとM&A」商事2258号34頁、35-38頁(2021)において詳しい。
[8] 経済産業省グリーン成長戦略室が主催する「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」において、「成長に資するカーボンプライシング」とは、いかなる制度設計が考えられるか、炭素税や排出量取引制度のみならず、国境調整措置やクレジット取引等も含めて、幅広く議論が行われています。
[9] 金融安定理事会により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
[10] CSR条項が定められている場合、少なくともサプライヤーにおいて人権尊重に対して一定の配慮がなされることが期待できます。また、もしサプライヤーが合意した行動規範に違反した場合には最終的には契約を解除できる内容とされていることが多いため、サプライヤーにおける人権侵害が明らかになった場合には、契約を解除することで、最低限、人権侵害への加担を継続することは防止できます。もっとも、直ちに契約を解除するのではなく、影響力を行使の上、その是正を行うことが望ましいと考えられています。
[11] 米国では、ハーヴェイ・ワインスタイン氏が経営する映画会社ワインスタイン・カンパニーは、同氏のセクシャルハラスメント問題が次々と明らかになったことを契機として、破産に至っています。
[12] グローバル企業が、買収した海外子会社において買収後も従前の経営陣に経営を任せるような場合、単に規程等を導入するだけでは必ずしもコントロールが容易ではないため、経営陣がESG等の要素を無視して短期的な収益を目指すことがないよう、インセンティブ報酬のKPIとしてSDGsやESG等の非財務指標も考慮にいれることも考えられます。
筆者略歴
川西 風人
のぞみ総合法律事務所
弁護士・ニューヨーク州弁護士
2005年 京都大学法学部卒業
2007年 司法修習終了(第60期)
弁護士法人大江橋法律事務所大阪事務所入所
2014年 University of California Los Angeles School of Law 卒業
2014年~2015年 Oon & Bazul LLP(シンガポール)訴訟・国際仲裁チーム勤務
2015年 弁護士法人大江橋法律事務所東京事務所
2017年 ニューヨーク州弁護士登録
2016年~2019年 双日株式会社法務部 勤務
2019年~2020年 弁護士法人大江橋法律事務所東京事務所
2021年 のぞみ総合法律事務所入所
主要取扱分野
M&A・企業再編・事業提携、コーポレートガバナンス・株主総会指導、コンプライアンス(不祥事対応等)、SDGs・ESG、国際取引、クロスボーダーM&A、紛争案件等
連絡先
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