インサイダー取引規制への対応
金融商品取引法が定めるインサイダー取引規制は、直接的には、専ら上場企業でインサイダー情報を知った役員・従業員や株式取引を行う個人に向けられた規制です。
しかし、自社内外の個人による株式取引がインサイダー取引の嫌疑で調査対象となった場合、その影響は、調査対象の個人のみならず、自社にも大きな影響を及ぼします。具体的には、上場企業である自社においてインサイダー情報(法律上は、「内部者情報」とか「重要事実」と呼ばれます。)としての重要事実を決定した意思決定機関はどこか、いつ決定したか、どのようにインサイダー情報の管理をしていたかが調査の対象とされ、膨大な資料の提出と説明を余儀なくされるほか、万が一にもインサイダー情報の管理不足があった場合には、再発防止策の策定・実施を求められることもあります。また、こうした事態に適切に対処できなければ、取引所との関係で、上場の維持にも大きな影響を及ぼします。インサイダー取引の態様が悪質であるとして刑事事件になった場合には、企業が被るダメージは更に大きなものとなります。
特に金融商品取引法の改正により、インサイダー情報を知って株式売買をした場合のみならず、インサイダー情報を知ってそれを伝達した場合や、インサイダー情報を知りながら、株式売買を他人に推奨した場合も違反となり得ることとなり、近年は、このような伝達罪や推奨罪での摘発が続いていることから、インサイダー情報に触れる役員や従業員をかかえる上場企業にとって、インサイダー取引規制への対応はより一層重要となっています。
このように、インサイダー取引規制は、「個人の株取引の問題」というイメージが払拭できず、上場企業において、事前の対応が不十分な結果、いざ調査が始まった後になって通常業務が滞るほどの混乱を来たす例が散見されます。
したがって、インサイダー取引規制に適切に対応するためには、上場企業において、
- 意思決定機関の捉え方
- インサイダー情報の発生・決定時期の適切な捉え方
- 発生、決定したインサイダー情報の管理のあり方
- 役員、社員による自社株式の取引に対する自社規制のあり方と運用のモニタリング
など実に様々な論点について整理し、制度を整備し、適切な運用と見直しを常に心がけることが求められるのです。
のぞみ総合法律事務所では、以下のとおり、上場企業におけるインサイダー取引規制への適切な対応のための様々なサポートを行っていますが、弊事務所は証券取引等監視委員会にて数多くのインサイダー取引の調査を指揮した経験のある弁護士を擁し、調査実務を踏まえた当局目線での的確なサポートを提供しているのが特徴です。
インサイダー情報管理制度、自社株式の売買制度に関する支援
インサイダー情報管理の方法や役員社員らによる自社株式売買制度の運用を誤ると、せっかくの制度も絵に描いた餅となるばかりか、例えば役員が自社株式の買付申請を行い企業が許可をし、それに基づいて売買したものについて、後にインサイダー取引として摘発されかねませんし、実際にもそのような摘発例があります。
そのため、のぞみ総合法律事務所では、インサイダー取引の徹底防止の観点から、上場企業が定めるインサイダー情報管理制度や自社株式の売買制度について様々な支援をしています。
具体的支援業務の例
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上場企業における意思決定過程に即した適切なインサイダー情報管理制度の整備
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上場企業の役員、社員による自社株式売買の届出制度等の整備
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こうした制度に関する社内規程・運用マニュアルの整備、改訂
インサイダー情報か否か、インサイダー取引規制の適用を受けるか否かの個別案件への対応
インサイダー取引規制への対応の難しさは、インサイダー情報管理制度や自社株式売買の自主規制制度を定めたとしても、いつ、何についてインサイダー情報となるのか、誰がインサイダー情報を知った者となるのか、誰が自社株式売買禁止の規制を受ける対象者となるのかの個別判断が非常に難しいところです。
こうした問題こそ、上場企業が実際に抱える悩みであり、弁護士には、慎重でありながらも過度の自主規制となり過ぎないよう的確な判断が求められます。のぞみ総合法律事務所では、こうした個別案件のご相談についても、しっかりと対応いたします。
インサイダー取引規制の適用外制度を利用した円滑な自社株式売買の支援
金融商品取引法では、「クロ・クロ取引」とか「知る前計画」などと言われる仕組みを利用して自社株式の売買を行った場合にはインサイダー取引規制を適用しないとされています。そのため、のぞみ総合法律事務所では、こうした仕組みを活用して、インサイダー取引規制がかかるか否かの不安定な状態を解消し、安全に自社株式の取引ができるよう、契約の作成、取引スキームのご提案などの支援を行っています。
役員研修・社員研修・勉強会
インサイダー取引規制は、それ自体が非常に難解であり、また、一般に想像される規制内容と調査実務で採用されている規制の解釈に大きなギャップがあること、さらに、いったん調査対象となった場合に想定以上の負担を上場企業が負うことから、ニッチな論点でありながら、しっかりと研修で学び、規制の厳しさを理解しておくことが、何よりの事前予防策となります。
そのため、のぞみ総合法律事務所では、これまで、インサイダー取引規制に関する役員研修・社員研修を、リアル・オンラインを問わず、数多く実施して参りました。研修では、難解な法律論を解説するだけのものではなく、摘発の現場をリアルに表現し、インサイダー取引規制の厳しさを分かりやすく理解いただくよう工夫をしております。